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2007年4月 6日 (金)

福島の温泉

高校生のとき仲間5人で福島の鄙びた温泉旅館に出かけたことがあった。

駅からの長い田んぼ道を歩いていくと、懐かしさを感じる里山の風景にその宿はぽつんと溶け込んでいた。

宿に着いた僕たちは宿の女将さんに”お風呂開いてるから何時でもどうぞ”と言われ、早々に一段低いところにある風呂場に向かって一つしかない階段を降りて行った。重たい木の引き戸を開けて脱衣場に入り、ささっと服を籠に脱ぎ捨てて浴室に通じる引き戸を開けようとしたが、鍵が掛かっているようで開かない。”何だ開かないよ”と言ったとき、浴室の中から女性の声か?と思えるようなざわめきが聞こえた。”ああ、先客が居るんだ!じゃあ、後にしようか?”と言ってそそくさと服を着て脱衣場を出た。”でも、籠は全部空っぽだったよなあ?でも棚は籠で全部埋まっていなかったので、この引き戸は鍵も掛からないから、女性だったら籠ごと中に持っていっても不思議じゃないか?”とか言いながら、中二階にある卓球場で時間を潰す事にした。ここなら上がって来るのも見逃さないし、次の人に先を越されることもない、そう思って卓球を始めた。

小一時間もした頃だろうか?女将さんがやって来た。

”あんたたちお風呂はどうだったね?”

”えーと、先に女の人たちが入っていたんでここで待ってるんですよ、でも長湯ですよねえ?”

”女の人たち?そんな筈無いわよ、だって今日泊まってるのはあんたたちだけだもの”

”えっ!鍵も掛かってたし、中から声も聞こえましたよ”

”何言ってるの?鍵なんか付いてないわよ”

狐にでもつままれたような気分の僕たちは、風呂場へと向かった。確かに浴室に通じる引き戸には鍵は無く、浴室の出入り口はこの引き戸だけ、中二階の卓球場と脱衣場の引き戸はすぐ目に見えるところにあった。唯でさえ薄暗い古びた浴室は、振り向くと誰か居そうな薄気味悪さを演出していた。

遭難者や自殺者の魂は、この長閑な里山には似つかわしくない。でも、今にして思えば”自分はもしかしたら変わった体験をしやすいのかも知れない”と自ら認識した最初の出来事であった。

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