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2007年8月19日 (日)

夕闇の少女

それは冬の終わり、新しく住むアパートを探しに東京に来た時だった。まだ東京に不案内だった僕は夕闇の中電話で予約した宿が見つからず、ウロウロしていた。
建物の隙間の路地に今時じゃありえないような服装の女の子が落ち着かない様子で立っていた。白いブラウスに厚手のカーディガン、黒っぽいズボンに木のサンダル。ありえないだろ?
中学生位だろうか?止めておこうかとも思ったけど、あんまり人通りも無い所でちょっと困っていたので、思い切って聞いてみた。
”ちょっと道を聴いてもいい?”
苛々してるように見える彼女は、相手にしてくれず路地の奥の方を見ている。誰かを待っているんだろうか?
”ゴメン、このあたりに...と言う旅館知らない?”
彼女はちょっと面倒そうに、
”この辺に旅館なんか無いよ”
と言う。
”ああ、そうなんだ?ありがとう。”
と言って、路地から表通りに出て辺りを見回した。しょうがない、駅前に戻って交番で聞こうと思いながら振り返って先ほどの路地の方を見た。
少女がいない!
奥の方を目を凝らしてみてみたがいない。隠れたか?でもそんなに隠れるような場所も無いようす。ちょっとした暗がりではっきり見えないが、建物の影の中は違う世界のような感じがした。
”さっき、影から出たから見えなくなったんだろうか?”
怖いことには慣れっこになっていた僕には、ちょっと探究心が湧いてきた。それでも恐る恐る影の中に足を踏み入れてみた。でも、何も変わらなかったし、彼女が再び姿を見せることも無かった。

”う~ん、またかなあ?”
”でも、受け答えまでしてくれたからなあ?”
”今まで受け答えをしてくれた人は居なかったよなあ?”
それとも変な人に声を掛けられて怖くて逃げただけか?それにしては、一歩通り側に踏み出して駅の方を見ただけだから、3秒も経っていない。3秒で路地の向こう側にまで抜けられるか?

後で知った事だが、その日は3月9日、翌10日未明は東京大空襲だった。ここは空襲の酷い被災地、まあ東京などは何処に行っても同じような事が言えるだろうが、毎年終戦記念日になると不思議とその娘のことを思い出す。でも、出来れば僕の見間違いであればいいと思う。

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コメント

その少女の魂は今もあの路地裏にいるんでしょうかね。
戦争って嫌だなぁ。

投稿: hanaぽん | 2007年8月23日 (木) 16時24分

どうかなあ?
ちょっと振り返った隙に居なくなっちゃって、隠れるところも無いような感じだったし、あ~またか?でもここまでリアルなのは初めてだな?とか思ってね。服装と3月9日だったのとで空襲にこじつけちゃったけど、戦争とは限らないよね。
それに、もし何時ものように、”見た”のであれば、その年で死んだ女性が居ると言う事でしょ?
それって、あんまり嬉しい話じゃないよね?
でも、終戦記念日になると思い出すんだよね。

投稿: フロの飼い主 | 2007年8月23日 (木) 19時23分

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