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2008年6月17日 (火)

トラとの別れ

一匹だけになってしまったトラは、元来の気の強さに加えそれまでは二匹だったため負けなかった喧嘩に負けるようになってきました。

ある日、彼は首筋に大怪我をしていました。ビックリした僕は、傷口を念入りに消毒し、簡単に取れないようにイソジンゲルを大量に塗ってガーゼで塞ぎ、包帯剤のスプレーで固めて、3日間抗生剤を飲ませました。
一度は傷も塞がり、良くなったかに見えたのですが、皮下に雑菌が残ったようで皮下膿瘍になってしまいました。朝だったこともあり、再び開いてしまった傷口から排膿させてイソジンで消毒して、首に包帯をして職場に行くことにしました。動物病院に入院させて、抗生剤で還流しないと治りそうも無いように思えました。トラは、何時もは広い道まで送りに来るのに、その日はアパートの前に座ったまま、僕を見送っていました。4回ほど振り返ってみましたが、彼はずっと座ったままこちらを見ていました。
”やっぱり具合が悪いんだな?”と既に遅刻状態の中、僕は職場に急ぎました。その日は、朝から大事な会議が入っていて、そのプロジェクトのリーダーになってしまっていた僕には、出ないわけには行かない会議だった。

昼になり、職場には、”場合によっては午後少し遅れます。”と言い残して、僕はトラを探しに行きました。でも2時間ほど探しても見つけられなかった。何時も朝と夕方しか行かないので昼間はどこかに行っているのか?と思い、一度職場に戻りました。夕方急いでアパートに戻りましたが、やはりトラは現われません。お茶畑、車の下、軒先、植え込みの中、トラが隠れそうなところを探して回りましたが見つかりません。流石に暗くなってから人の家の軒先を懐中電灯で照らして歩くわけにも行かず、僕は車で夜更けまで待ちました。でもトラは現われることは無かった。”しまった、あの時職場に連れて行ってしまえば良かった。”

その日から2週間ほど毎日、朝と夕方、僕はトラを探し回りました。既に無駄なことは解っていたのですが、それでも探し出したかった。

結局、朝、ちょっと虚ろな表情で座ったまま見送ってくれたトラが僕の見たトラの最後の姿になってしまいました。だから記憶の中のトラの最後の姿は、首に白い包帯を巻いています。

猫の死に際を飼主は見れないと良く言われます。野生動物は体が弱った時、他の動物に見つからないような、身を潜められる狭いところに隠れて自力で回復するのをじっと待ちます。でも、大概そのまま意識が無くなってしまうのでしょう?だから、それを見つけられない飼主は、死に際に会えません。トラもきっとそうだったのでしょう?何処か、2週間かけても僕には見つけられないようなところで眠るように意識を失ってしまったんだろうと思います。出来れば天寿を全うして彼のお気に入りの僕の膝の上で息を引き取らせてあげたかった。

フロの顔もトラの顔も未だに脳裏に浮かびます。彼らは本当は僕の大事な家族だったようです。残念ながら彼らが幸福な野良猫だったのかは解りませんが、彼らが自らの境遇を野良猫だと思っていた筈も無く、僕のところに来ていたことで彼らの生涯がどうだったのかは知りようもありません。でも、僕は君らと一時期一緒に生きることが出来て良かった。

家の2台のデスクトップPCのホストネームは、それぞれフロとトラです。中身が入れ替わってもホストネームは何時もフロとトラです。そして僕のハンドルネームも・・・

彼らのことは僕の大事な思い出ですが、これでお終いです。
もっと沢山のエピソードがあるけれども、多分もう書きません。

ああ、でも何でフロの飼主と名乗っているのかを書かなくちゃならないですかね?(ならないって事は無いか?)

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コメント

そうなんですか。
猫って、どこもやっぱりそうなんですね。
ウチで飼ってた猫も、出て行ったキリ、かえって来ませんでした。。。
実は、、、いつか、ハンドルネームの由来、聞いて見たいと思っていました。

投稿: エリミ♂ | 2008年6月17日 (火) 22時38分

 やっぱり思った通りの結果になってしまいました。野良猫の宿命があまりにも切なくて、私が今まで出会った猫も、結末がおなじなのです。でも命なのです。この頃も赤ちゃんが沢山産まれて必死に当たりをうかがいながらゴミ袋の餌を探しているのです。良い人との出会いがありますようにと思うばかりです。トラとの別れの題を見てすぐには読むことができませんでした。悲しすぎます。でもフロとトラの楽しかったお話は聞きたい思いがします。

投稿: 猫好き | 2008年6月17日 (火) 23時46分

今日、気持ちが少し落ち着いたので一字一句かみしめて読み直したところです。フロとトラは野良猫のような自由がありながら、餌を探す苦労がないまた飼い猫のような温かい愛情を受け、トラの最後のフロの飼い主さんを見送る姿は精一杯の感謝の姿だったと思います。
 私が可愛がっていた野良猫も、私が郷から帰ってくるのを待って私にニヤオーと3回言って家と家の間の狭い間に入っていきました。二度と会うことはありません。こころから可愛がった猫も犬も最後は恩を忘れずに感謝の気持ちを伝えてから去っていくように思えます。野良猫として産まれ、フロの飼い主さんに出会え幸せな人生だったと思います、ラッキーな猫だったですね。ほんの一握りの猫だけですよね。

投稿: 猫好き | 2008年6月18日 (水) 11時20分

エリミ♂さん
野生動物の本能なのでしょうね?
猫は野生を忘れていない、とか言われるし、特に野良猫達は普段から隠れる場所を持ってるようですよ。
エリミさんのハンドルネームも♂マークに気付くまで女性だと思ってました。(笑)

投稿: フロの飼主 | 2008年6月18日 (水) 19時57分

猫好きさん
猫好きさんが可愛がっていた野良猫ももう居ないのですね?
殆どの野良猫たちが生み落とされただけで、母猫に面倒を見てもらえず数ヶ月で死んでゆくのから見れば、ラッキーな一握りに入る猫だったのでしょうね?実際彼らの2匹の兄弟は合わせて11匹居ましたが、生き残って居たのは彼らだけでしたからね。
どう言う因果かは解りませんが、自分の人生の中で、一時彼らから楽しい時間を与えられたと思うようにしています。換わりに僕が彼らに何かをしてあげられたのかは解らないのですが・・・

投稿: フロの飼主 | 2008年6月18日 (水) 20時09分

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