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2011年4月 6日 (水)

Stand Alone Complexの意味を深読みする

リチャード ドーキンスがその著書であるThe selfish gene(生物=生存機械論)の中で提唱するミーム(meme)と言う概念から、Stand Alone Complexの意味を深読みしてみます。

memeとは、模倣の単位と言う概念を伝える名詞として、模倣に相当するギリシャ語の語源とするmimemeと言う単語をドーキンスがgene(遺伝子)に対比させた造語だそうです。ミームが遺伝子プールと同じように、ミームプール内で繁殖する際には、広い意味で模倣と呼びうる過程を媒介として、脳から脳へ渡り歩く、としています。
この本の中で、自然淘汰を動作させる基本理論は、自己複製を行う実体の生存率の差に基づいて進化する、として論じられており、生物のそれはgene(DNA)であり、生物以外のものをmeme(ミーム)と説いています。まあ、全てをmeme(ミーム)として、生物で成功を収めた唯一のミームがDNAとしても良いと思われますが・・・

Solid State Societyのラストに、”我々は消滅する媒介者となって、次のSocietyに介入して行こう”なんて言い方で深層的無意識が人間の脳を媒体にして一人歩きをするような表現が用いられていますが、一つの理論でも、一つの思考でも、信仰のような理念でも、ファッションスタイルでも、デザインでも、文化でも、習慣でも、何であれ媒体上を伝播し、自らのコピーを産み出すような自己複製子をミームと呼びます。
一番成功しているミームは、神や仏かも知れません。説教や法典に拠って人々の脳にそのコピーが作られ、人から人へ自らのコピーを増やしていくものなら何でもミームと呼べます。(当然人でなくても良いのです。模倣が出来る生物は沢山居ますので・・・)神や仏ほど長生きするミームでなくとも、例えばホットパンツにタイツ+ロングブーツと言った流行のファッションスタイルもそれが多くの人に魅力的に映るのであれば、コピーされてゆきます。ですから、これも立派なミームと呼べます。

ミームは、gene(DNA)のように親子や兄弟のような近親関係と言った媒介者間の関係を持ちません。伝播する媒体は、基本的に脳ですが、伝播方法は何でも良いのです。街中で見るだけでも、ネットで見るとか聞くとか、TVで見るとかラジオを聞くとか、媒介者間に特別な相互関係を持つ必要がありません。これはつまり、媒介者がStand Aloneな関係のまま、それぞれの脳の中におよそ同一なコピーを持つ状態になります。(およそ同一なコピーの意味は、必ずしも正確にコピーされるかは解からないからです。)
ミームの自然淘汰の動作原理は、魅力的かどうかだけです。死後の因果応報の世界は十分魅力的ですし、ホーキンス博士の宇宙の起源論なども魅力的なミームなので、世界中で誰でも知っている程のコピー数を稼いでいます。前述のファッションも僕が電車に乗る30分程度の時間の中でもそっちゅう見かける程のコピー数を稼ぎ出しています。

およそ相互関係の無い多数の媒体者達の脳に同一なコピーを持つ状態は、一つのミームから見れば一つのミームプール(ここでは敢えて複合体と呼びたい)と見て取れます。Stand Aloneな関係にある媒体者達をComplexとせしめる因子がミームとも考える事も出来ます。こう考えてゆくと、Stand Alone Complexと言う社会現象は、ミームが繁殖してゆく繁殖現象そのものとも言えます。

我々がgene(DNA)を媒介する生存機械に過ぎず、寿命を持ち消滅してゆくように、我々の脳もまたmeme(ミーム)を媒介し、その魅力を感じなくなることで媒体者としての生存機械を消滅させます。そして、また次の媒体者に介入してゆく、もしくは別のミームを伝播する媒介者になって社会に介入してゆくことになると思われます。

ミームは、媒介者の意図があっても無くても伝播し媒体者に介入してゆきます。
Stand Alone Complexの意味は?と言う記事やStand Alone Complexの再考と言う記事でキーワードにした
”全ての情報は、共有し並列化した段階で単一性を喪失し、動機なき他者の無意識に、あるいは、動機ある他者の意思に内包化される。”
と言うオリジナルの笑い男が言った、彼の経験に基づく推論を上記の理屈で捕らえるなら、
”動機のあるなしに係わらずミームを伝播させることで、Stand Alone Complexと言う社会現象を生み出し、社会に介入する媒介者になる”
と言う事になる、のだろうと思われます。

士郎正宗がStand Alone Complexと言う言葉を副題として攻殻機動隊と言うStoryを生み出し、その魅力にその意味を知りたくなった媒体者が今この記事を読んでいる貴方であり、媒体者であり媒介者たる僕がこんな記事を書いて貴方の脳に介入していると言えます。

まあ、士郎正宗さんや神山健治さん、管正太郎さん、櫻井圭記さん達がこう考えて物語を紡いだのかどうかは僕には解かりませんが・・・

補足:四郎正宗さん達が描く電脳化の時代に、一方はウイルスを使って扇動者を作り上げ民衆を故意に動かそうとし、もう一方は話をするだけの旧来の方法であり1人のカリスマに民衆が自らの意志で従おうとする。でもどちらも自らを律する規律の中に存在する自我ではないから低いところに流れてしまい、双方が目指すところに行き着くわけではない。
大変面白い構成と言うか、絶望と期待が入り混じっていると言うか。
僕は、きっと共感するからこんな記事を書くんだね?

もう一つ補足:文章の中で、「特別な関係を持たない人同志」を「Stand Aloneな関係のまま」としましたが、社会に生きる以上完全にStand Aloneな状態にはならないですよね。Network Computerとの対比でStand Alone Computerと言うものがありますが、脳を一つのComputerと考えれば、別にEthernetで繋がってなくとも言語を含めたMulti Mediaで社会と言うNetworkに繋がっていると言えます。だから、厳密にはこの解説は正しくありません。

社会を見回すとIntranetな状態のグループを見かけますし、外部からの情報を拒絶しているように見える個人も見つける事が出来ます。社会に生きてなお孤立した精神状態にあると言えるでしょうか?自ら外部へのInterfaceを閉じてしまっているように思えます。まるで外部への興味をなくしてしまったかのようです。大概こう言う人達って犯罪行為に走ることで我々はその存在を知ることが出来るのですが、何故自閉行為に走るのか僕には残念ながら理解できていません。

Stand Aloneな人とは、電脳化の時代では、Ethernet(そういう時代にこんな通信プロトコルが使われているかは解りませんが・・・)で繋がって無い人を単純に指しても良いかもしれませんが、現代では外部への関心を閉じてしまった人、一つ踏み込んで言えば、外部への好奇心を失ってしまった人を指すのかと思います。それは意味を広げれば、凡庸な生活を続け、人の話に耳を傾けない人をも指すかも知れません。

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